外国人材への「教育に関する実態調査」結果と考察を発表しました

外国人の9割「一人で仕事できる」と認識、指導者は4割にとどまる。
8割以上が職場に満足ながら、コミュニケーションでの苦労を経験
~入管法改正から半年外国人従業員と日本人指導者の間で教育について認識の差が明らかに~

当社は、2019年1月に実施した外国人指導経験者を対象にした調査に続き、日本のサービス業で就労経験をもつ外国人材を対象に「外国人材の教育に関する実態調査」を4月5日から30日にかけて実施、その結果を発表しました。

 

■調査の目的
本調査は、今年1月に実施した「外国人指導経験者への教育実態調査」に対し、指導される立場である外国人材が日本での教育環境をどう捉えているかを知るために実施しました。改正入管法が施行されたことを背景に、外国人とその受け皿である企業が互いに何を期待し、何が課題であるのかを認識することで、受け入れに必要な準備や心構えの手がかりを得ることを目的としています。

 

■調査の主要ポイント
教育を受けた結果、ひとりで業務ができるようになりましたか?(Q3より)
A.約9割が「基本的にはひとりでできる」と回答。指導側の「任せられる」約4割と認識のずれ

 

ひとりで業務ができるようになるまでのトレーニング期間はどれぐらいでしたか?( Q4より)
A.約7割が30時間以下で独り立ちしたと回答。指導者の回答約3割と認識のずれ

 

※指導者の回答は2019年1月に実施した「外国人教育に関する実態調査」より転載。国内サービス業(100拠点以上展開する運輸・旅行・小売・飲 食・介護福祉・その他生活関連サービス業)において、外国人を指導中の正社員309名を対象に、当社企画のもと株式会社マクロミルが調査を実施

 

■調査結果
Q1.あなたの職場ではどんな内容の教育・研修・指導がありましたか?(複数選択)

業務に関する内容の教育が7割、日本の商習慣の教育も5割弱が実施
1月に実施した指導者への調査と同じく、業務に関する内容が7割以上となりました。母国語での指導は2割にとどまっており、日本人と同じレベルまでの教育を目指すためには不十分な環境と言えるかもしれません。
外国人材の多様なバックグラウンドによる認識や習慣の違いを踏まえて日本の商習慣、勤怠や心構えなどについての指導が実施されているようです。

 

Q2.教育・研修・指導はどんな方法で行われましたか?(複数選択)

7割がOJTを実施、「何も教えてもらえなかった」も1割
メインの教育はOJTとなっており、2位以下の紙マニュアルやシステムでの研修、集合研修はいずれも座学に相当すると考えられ、OJT未実施の3割は実地での指導が十分に行われていない状況がうかがえます。また、1月に実施した指導者への調査では、OJT実施率が8割を超えたものの、6割の指導者が「満足な指導ができていない」と回答しており、独り立ちして業務を推進するのに十分な教育環境が整っているとは考えにくい状態です。

 

Q3.教育を受けた結果、ひとりで業務ができるようになりましたか?(ひとつ選択)

約9割が「基本的にはひとりでできる」と回答。指導側の「任せられる」約4割と認識のずれ
「時々助けてもらえば一人で業務ができる」を含めると、9割弱が独り立ちしていると回答。一方で、 1月に実施した指導者への調査では、6割が「十分な教育ができていない」と回答しており、「安心して仕事を任せられる」と回答した指導者は4割弱にとどまりました。このことから、元々の日本人と外国人の文化や習慣の違いによる考え方や価値観の相違のほか、指導者が本来期待している習得レベルが伝わっていなかったり、そもそも外国人本人が自分の習得状況を正しく確認、認識する機会や手段がない可能性が考えられます。

 

Q4.ひとりで業務ができるようになるまでのトレーニング期間はどれぐらいでしたか?(ひとつ選択)

約7割が30時間以下で独り立ちしたと回答。時間数に応じて指導言語に差も
一人で業務ができるようになるまでに必要なトレーニング期間を時間に換算すると、約7割が30時間以下で独り立ちしたと回答しました。1月に実施した指導者への調査では、新人が独り立ちするまでに必要な時間が30時間以下と回答したのはわずか27%であり、外国人の認識と差異が見られる結果となりました。
また、30時間以下とそれ以上のグループで分けたとき、OJT実施率は双方とも72%で同率でしたが、業務に関する内容について、30時間以下グループの方が母国語での教育比率が6%程度高い傾向がみられました。

 

Q5.業務の中で苦労した(している)ことはありましたか?(複数選択)

8割が苦労を経験。内訳は「コミュニケーション円滑でない」がトップ
「特に苦労したことがない」19%を除き、81%が何らかの苦労を経験している中、「コミュニケーションが円滑でない」という回答が目立ちました。 1月に実施した指導者への調査でも「コミュニケーションで苦労している」という回答は34%あった他、「細かい指示が正確に伝わらない」という回答も半数を超えました。
思うように指示が伝わらないこともコミュニケーション不全のひとつと捉えることができ、双方にとって深刻な課題と言えそうです。

 

Q6.教育内容について、もっと教えてほしかったことはありますか?(複数回答)

6割が日本人の商習慣や、生活で必要な文化や習慣についても教えてほしいと回答
日本語で良いのでもっと業務内容について教えてほしいという回答がある一方、日本の商習慣や文化、生活習慣についても教えてほしいという回答が全体の6割にのぼりました。Q5ではコミュニケーションが円滑でないという回答が過半数を超えましたが、前提条件となる文化や習慣の違いを理解、認識しておくことでコミュニケーションに関わる苦労が減少することも考えられます。

 

Q7.教育方法についての希望はありますか?(複数選択)

4割が「見本を示してほしい」と回答。OJTではすべての業務をカバーしきれていない可能性
OJTの実施率が7割を超えていても4割が「ひとつひとつの仕事について見本を見たい」と回答しました。Q4で約7割がトレーニング期間を30時間以下で終えているという結果が出ていることからも、 OJTで全業務の教育をカバーしきれているとは言い難く、また、マニュアルがあったとしても現状のトレーニングが十分でないと考えられます。「言語環境を整えてほしい」「動画マニュアルが欲しい」という要望があることを踏まえると、言語に頼らず視覚で学べる環境を整備することは有効であると言えそうです。
ただし、動画マニュアルであっても実際には見るだけではできるようにならず、実際にやってみて自分のレベルを把握し、できるようになる仕組みを整えることが最も重要と言えます。

 

Q8.離職までの期間を教えてください。(ひとつ選択)

7割が1年以内に離職。短期滞在者が多数を占める影響以外に教育時間と在籍期間の関連性も

短期滞在者が多い外国人材は1年以内に7割が離職するという結果が出ました。ただし、上記の通り教育時間と の関連性も見られ、1年以上在籍したと回答したグループではQ4の「独り立ちまで31時間以上」が48%と半数 に迫る結果であったのに対し、1年以内に離職したグループでは25%にとどまりました。

 

Q9.職場の総合的な満足度を教えてください(ひとつ選択)

8割以上が職場に満足していると回答
「とても満足」「まあ満足」の合計が8割以上となり、教育や業務推進上の課題はありつつも、日本での就業は好意的にとらえられています。

 

■調査結果の考察

上記より、人材不足時代に対面OJTですべてカバーするのは非現実的であり、外国人を始めとした多様な人材が理解しやすく、指導者の負荷も下げる教育環境が必要と言えます。

 

■代表の高橋より調査結果を受けてのコメント
今回の調査を受けて、受け入れ側の日本人指導者と、働き手の外国人の間には、日本人間では生じない様々なギャップや課題が浮き彫りになりました。
当社は、従業員教育をデジタルトランスフォーメーションすることでこの課題を解消し、働き手の能力を引き上げ、国内の生産性向上に貢献してまいります。

 

■外国人材への教育に関する実態調査
調査企画:ClipLine株式会社
調査協力:株式会社YOLO JAPAN
調査対象:過去3年以内に国内サービス業で1ヶ月以上働いた経験がある外国人労働者300名
※国内サービス業とは【飲食・小売・介護福祉・運輸・その他生活関連サービス】を指します
調査方法:オンライン上でのアンケート調査
調査地域:全国
調査期間:2019年4月5日~30日
主な調査内容:外国人労働者の教育内容や手段、その成果など

 

■ClipLineについて
ClipLineはサービス産業の「できる」をふやすための双方向動画システムです。
OJTを1対1から1対多人数へ拡張し、24時間いつでもどこでも新人がひとりでトレーニングできる環境を構築したり、遠隔での店舗マネジメントを実現します。
一橋大学の野中郁次郎名誉教授が提唱した「SECIモデル」を基本概念として開発され、現場のベストプ ラクティス(暗黙知)を形式知として全店舗に水平展開することが可能です。この仕組みは「映像音声クリップを利用した自律的学習システム」として特許を取得しています(特許第6140375号)。
2014年10月にサービスを開始し、吉野家、日本ケンタッキー・フライドチキン、高島屋といった外食・小売企業の導入から始まり、現在では介護福祉・薬局・美容など幅広い分野で活用されるようにな りました。財務効果実績として、基礎教育の均質化による顧客満足度向上を反映した売り上げアップ、 離職率を3分の1に削減、新人教育の時間短縮などがあります。
2019年7月末現在、約8,000店舗、15万人以上に利用されています。

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